社会課題として睡眠にフォーカスする

人間にとって当然の営みである睡眠という行為に対し、不眠症等の睡眠障害を抱えている人々も数多く存在しています。睡眠という行為が一般的でありすぎるため軽視されやすい睡眠障害ですが、意識して調べると日本は他の国より睡眠時間の割合が低いことがわかりました。これに対しちゃんと社会課題として睡眠というものを取り上げて記載していこうと思います。

なぜ睡眠について考えるのか

睡眠についてちゃんと向き合った理由は私自身が高校生の頃より不眠症を患っており、それにより寝付きが悪く十分な睡眠時間を確保できずパフォーマンスを発揮することができないことがよくあるからというのが一番大きな理由です。

当初この問題は個人の問題であり、気持ちの問題なのかもしれないと思って納得しようとしていたこともあったのですが、社会人になり、周りに自分が不眠症であることを打ち明けたところ、意外なことに私以外にも結構な人数が不眠という睡眠障害に悩まされていることがわかりました。その時、睡眠障害によって苦労している人は思いの外多くいるのかもと思いちゃんと調べてみようと思ったのがきっかけです。

睡眠をすることの効果

人間が生活を行う上で一般に行われている睡眠ですが、この睡眠には非常に健康上で大きな意味があります。もちろんすべての人が正しく理解した上で生活を行っているでしょうが、改めて睡眠という行為にはこころと身体の健康維持の双方において重要な役割があるのです。

睡眠が身体損傷に対する修復の働きや免疫力の向上に寄与していることを証明する研究として、2009年に猛威を奮った新型インフルエンザの発症率と睡眠率の関係性にについてを22~55歳の153人の男女に対し検証するという実験にて十分に睡眠を行えた人は睡眠を十分に行えなかった人に比べて発症のリスクが十分に低い結果となったというものもあるそうです。 その他にも国内での4000人以上の四年間の追跡調査でも入眠障害のある人はない人に比べて生活習慣病や高血圧や糖尿病といった病気の発症リスクが高くなるという結果もあるということから睡眠と身体の関連性は強いことがわかります。

また、睡眠には脳を休息させるという役割を担っており、睡眠が悪化した場合には精神的な症状の悪化が引き起こされている割合が高いことも研究の結果としても明らかになっています。

これらの内容は日本における睡眠健康教育の現状と課題という論文の中に記載されている研究結果に記載されていますので詳細な内容はこちらをご覧ください。

また足りない睡眠時間を長期間続けてしまった場合にもパフォーマンスを発揮することができなくなります。 研究結果として6時間未満の睡眠を1週間続けると一晩徹夜した人と同等、2週間では二晩徹夜した状態と同じ認知能力にまで下がるそうです。 こういった睡眠障害によって以下のような日常的な問題や病気の発症のリスクが増加してしまいます。

日本人の4割近くが抱える「睡眠負債」。 睡眠不足を解決するソリューションとは?より

睡眠を行うということは健康的に生活する上で欠かすことのできないものということがより深く理解することができます。

睡眠障害とはどのようなものがあるのか

いわゆる睡眠障害といっても眠りにつくことができない不眠症だけではなくその他にも睡眠障害と呼ばれるものはいくつか存在します。

その種類を簡単に例に挙げると以下のような種類に分類されます。

  • 不眠症

    • 寝つきの悪さ、中途覚醒など
  • 過眠症

    • 十分な睡眠時間にもかかわらず、眠さが取れない
  • リズム睡眠障害

    • 不規則な生活により体内時計のリズムが狂い活動に困難をきたす
  • 睡眠呼吸障害

    • 睡眠時無呼吸症状など、睡眠中の異常な呼吸状態
  • 身体疾患並びに精神疾患に合併した不眠

    • 何かしらの病状によって引き起こされる不眠
  • その他の睡眠障害

    • 上記分類によらない睡眠障害

睡眠障害の種類 | 不眠・眠りの情報サイト スイミンネット より

睡眠障害を起こす人の割合

睡眠障害を起こす人の割合は日本における睡眠健康教育の現状と課題の研究結果では2014年段階では3~99歳の新規患者6,466名のうち約20%の患者、つまり五人に一人に何かしらの睡眠障害が確認されたそうです。

睡眠障害に苦しむ人の割合は思った以上に国内で多く確認されていることがわかり、社会的な課題となっていることがわかります。

睡眠時間の過去との比較

睡眠障害という社会課題は昔からこれほど問題視されていたかという観点では実はそれは異なります。 このことは過去の睡眠時間と比較すると明らかになることです。

NHK国民生活時間調査によると、1960年から2015年にかけて睡眠時間の長さは平均して非常に短くなっていることがグラフからも明らかになっていて、現代の課題として認識されるべき事象ということがよくわかると思います。

日本と他国の睡眠レベルの差

睡眠障害に関する問題は世界的にみても日本は特別酷いものとされています。 日本でも耳にすることが多くなった「睡眠負債」という言葉ですが、これは健康を阻害することを示唆する数字ではあるのですが、このことは国の経済にも多大な影響を及ぼすことがわかっています。この睡眠負債の影響を経済損失として算出した場合に他国と比較すると日本がどれだけ睡眠に対して負債を背負っている国かということが理解することができます。 ちなみに以下の算出値は睡眠不足に伴う体調不良による欠勤や疾病によって起こるという想定のもとで行われているものだそうです。

睡眠障害はSDGsの文脈でも語られる

上記までで、睡眠は健康上の文脈においても、パフォーマンスの意味合いであっても重要であるということがわかったと思います。これは明らかに社会課題として考えられる必要のあるもので、場所によってはSDGsの文脈で語られていることもあります。

SDGsとは?についてはこちらの記事で説明しているので気になる人はこちらをご確認ください。

睡眠をSDGsの目標に照らし合わすと目標3の「健康と福祉」、目標4の「質の高い教育」、目標8の「働きがいと経済成長」などの項目が合致するのではないかなと思います。

あまり国内では睡眠とSDGsを紐付けて何か対策を行うということは見られないが、これらの目標の達成のためには睡眠の解消は非常に良い影響を及ぼすことになると思います。

睡眠障害を引き起こす主な原因

働きすぎ

日本人の労働時間は他国に比べて長いことがよく知られています。1日当たりの平均労働時間はアメリカやフランスの約3倍というデータもあります。残業時間も非常に多い傾向にある状況下なので、単純に睡眠不足を引き起こす可能性は高いということですね。

通勤時間の長さ

通勤時間と睡眠時間の関係を分析すると、平日は、通勤時間が長い都市部の人ほど睡眠時間が短いことがわかります。休日については、どの都道府県でも平日より多く寝ていて地域差も小さくなっています。また、通勤時間が長い人ほど休日に長く寝ていることがわかります。

つまり通勤時間によって睡眠障害が発生するリスクは高まるということがわかります。

総務省統計局が行った「平成28年 社会生活基本調査」の結果 より

長すぎるスマホ利用

現代人にとって最大の睡眠障害の理由と考えられているスマホ利用時間の長さは睡眠に大きく影響を及ぼします。

スマホにはたくさんの情報があり、閲覧する頻度が多いため、ちょくちょく見てしまうことが多いです。これは寝る時間が削られることにつながります。またスマホだけでなくIT機器の液晶画面から発せられるブルーライトは睡眠のリズムを乱すほど強力ではないとしても、寝る1~2時間前までSNSやメールなどネット上でのコミュニケーションをすれば感情が揺さぶられ覚醒度が高まり、眠りの質が低下することが明らかになっています。

コロナ禍における在宅勤務によって運動不足

もともと出社等により会社に行く機会の多かった人も急なコロナ禍によって在宅勤務に切り替わった人も多くいると思います。在宅勤務になったことで運動不足になる人々が続出し、身体的疲労につながらず睡眠障害を引き起こしたケースも最近ではよく見られるようになったようです。

急な在宅対応だったため世の中的にも多い問題とも言えます。

睡眠を改善するためには睡眠を知るところから

上記のように睡眠障害を引き起こす要因は多岐に渡ります。挙げたものの他にも空調管理であったり、食生活であったりとその他の要因も考えられるそうです。

日本は睡眠という分野において睡眠後進国と呼ばれる程度には睡眠というものに対する関心が薄いことで有名です。 つまり我々はこの社会課題を解決するためには、まず睡眠のメカニズムを知り、その上で自身の睡眠と向き合う必要があるのです。睡眠は生活の中の非常に多くの要因が関与するものです。それらを認識するための方法をいくつか記載していこうともいます。

睡眠のメカニズムを正しく認識する

睡眠を改善するには睡眠の特性を理解する必要があります。 例えば、睡眠には睡眠を促すメラトニンという物質が入眠を促すことが知られています。この物質の分泌量が高ければ高いほど入眠することは可能です。このメラトニンは日光を浴びることで分泌されるセロトニンと呼ばれる物質の量と比例して分泌されるものです。また、睡眠には脳の温度も影響します。日中は脳の温度が高くその逆に夜は脳の温度が低くなり眠りやすくなるといったことも要因としては考えられるのです。

そのほかにも睡眠の中にはレム睡眠とノンレム睡眠の二つがあり、その二つの周期によって織りなされるというのはかなり有名な話ですが、このサイクルの頻度が適切なタイミングで適切な頻度で行われているか等を知ることも自身の睡眠改善には役立ちます。

また、睡眠にはいかに考え事をせず空っぽの状態で眠る。つまり体に力が入らない状態を意識的に作れるかも重要です。 これにはシャッフル睡眠法や深呼吸、マインドフルネスといった方法などが考えられます。

このように眠るための方法を考えるときに眠れる状態に至にはどのような条件が必要なのかを知ることは自身の睡眠を改善する最善手を打つためにどうしても必要となるのです。

ウェアラブルデバイスを利用する

現代は一昔前よりヘルスケアを目的としたウェアラブル製品が市場に出回る機会も多いです。 たとえば有名なものだと時計型デバイスであるApple Watchであったり、Amazon Halo、臨床的に検証も済んでいるScanWatchなどがあります。

時計型でなくても指輪型のOuraRingという指輪型の睡眠トラッキング用のウェアラブルデバイスもあるので、こういった自動で観測してくれるデバイスを利用して、自身の睡眠並びに健康について理解を広げるという方法は非常に効果的です。

私自身も2021年の9月上旬にOuraRingを着用して、自身の健康を可視化しております。

日々のデータが蓄積され続けるので過去との比較もでき、自身の健康状態に対するマイナスやプラスにも関心が湧きます。

もう少し十分に結果が溜まったところで、データを活用し、要因分析を行う想定です。

睡眠障害を解決するために睡眠内科を受診する

睡眠は生活習慣による影響が大きいことが知られていますが、すぐに効果の出るものとも限りません。

ただしく原因を突き止めたり、対応するためにはお近くの睡眠内科や精神科を受診し、治療を行うことも重要となります。

おわりに

自身の課題感をもとに睡眠というテーマで現在の社会課題についてを考えてみました。 日本は睡眠後進国と呼ばれるほどに睡眠に対する理解が遅れてしまっているのが現実ですが、今回のことでやはり解決すべき課題であることが理解できました。

まずは睡眠に関する理解を進め、意識を変えていき、多くの人が内部的要因と外部的要因の双方から正しい睡眠を手に入れ健康的で高パフォーマンスを発揮することが可能な世の中にしていきたいと改めて強く感じました。

そして私自身の睡眠障害が治るといいな。

参考